昨年はコロナウィルス感染拡大の走りで、思いがけないところで様々な影響がありました。
特に外出の自粛で、外食・観光など人生を豊かにしてくれる(付加価値をつけてくれる)業態の落ち込みが非常に大きかったです。反面、エッセンシャルワーカーと呼ばれる業態(私のいるスーパー業界も含まれます)は寧ろ好調に推移して、改めてインフラ系の強さを実感させられました。
そして、外食に卸す(特に首都圏)食材に余剰が出てしまい、普段では扱えないような食材を安値で使用出来たりしていましたが・・・今年度に入って一気に様相が変わってきました。
最も顕著なのが様々な食材の値上げ要請です。
最近の商談の中では良い話を全く聞くことができていないのですが、ちょっと先を見通してみると、食糧危機まで感じられるようになってきたので、備忘録的に綴ってみました。
値上げになるもの
正直、一杯ありすぎてよく分からなくなって参りました。代表的なものをピックアップしてみます。いずれも生活に密着したものですが、値上げぐらいで済むのは正直マシな方かなとも思ってしまいます。
卵・関連製品
価格の優等生と言われ比較的安定していた鶏卵ですが、今年に入り上がり続け、ここにきて鶏卵製品の値上げ要請が一気に来ています。玉子焼き・煮卵・マヨネーズの果てまでも・・・
実際の相場を確認してみましょう。過去5年間の東京市場におけるたまご相場を下記に示してみました。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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1月 | 182 | 179 | 159 | 121 | 170 | 142 |
2月 | 209 | 204 | 189 | 152 | 185 | 183 |
3月 | 215 | 217 | 201 | 169 | 197 | 220 |
4月 | 215 | 227 | 179 | 174 | 202 | 241 |
5月 | 204 | 216 | 165 | 173 | 168 | 258 |
6月 | 197 | 197 | 165 | 151 | 160 | 260 |
7月 | 184 | 191 | 173 | 150 | 153 | |
8月 | 180 | 182 | 172 | 150 | 145 | |
9月 | 192 | 194 | 184 | 179 | 153 | |
10月 | 211 | 211 | 194 | 204 | 164 | |
11月 | 231 | 228 | 195 | 219 | 171 | |
12月 | 245 | 234 | 188 | 227 | 178 | |
平均 | 205 | 207 | 180 | 173 | 171 | 217 |
(JA全農たまご株式会社様のホームページより引用。数値はいずれも1kg当たりの数値です)
高値の原因は、飼料の高騰・鳥インフルエンザによる殺処分によるもの。特に鳥インフルエンザの殺処分は、960万羽を超え(因みに国内の鶏の飼育数は約1億2~3千羽で年々減少傾向)、過去最高の約5倍に上るものでした。
では、この高値はいつまで続くのか?
夏の猛暑で鶏が死なず、この冬に鳥インフルエンザが流行らなければ・・・年末には下げ相場になるとの予測が出ているようです。いずれにしても不確定要素が多いので、まだまだ予断を許さない状態です。
食用油
食油大手3社(昭和産業・日清オイリオ・Jオイルミルズ)が8月に今年3回目の値上げを決行することを発表しました。
健康志向の高まりで需要が減るかと思いきや、唐揚げブームも起きていたりするので、結局家庭・業務用両方で必要不可欠なのは変わりません。
原因は、主な原料となる大豆・菜種・パームの高騰。中国による購買増に加えて、生産地での天候不順が大きな原因となっているようです。
ここのところの価格推移を調べてみました。
更に遡るともっと原料が高い時期もあるのですが、その当時より今の方が輸送・製造に関わるコストが上がっていると思うので、原料高が解消されないうちは値下がりの目はなさそうです。
なくなりかねないもの(もっとやばい)
ただ、陸のものより海のものの方が聞いている限りはもっと逼迫しているような印象を受けています。
さんま
ここ数年、秋のニュースと言えばさんまの不漁。恒例にさえなった気がします。
中国漁船が先に遠洋で取ってしまうこともあり、日本での水揚げがどんどん減っています。そして、個人的には資源量もかなり減ってしまっているのでは?という気もしています。
それでも、以前ならニュース番組で”解凍さんまはお得!”とかいう紹介もされていました。ただし、今年に関しては、解凍さんまも店頭から消えるんじゃないかという勢いになっています。
というのも、”ヒネもの”と呼ばれる昨年以前からの持ち越し在庫もどんどん底を付いている状況下になっているから。さんま加工品の紹介もいただいているのですが、高すぎて導入はちょっと考えてしまいます。
魚卵
いくら・ししゃもっこ・数の子と、お寿司や冬にはおせちでもお世話になる魚卵の数々。
原料となる魚が取れないので、必然的に卵の流通量も減ってしまいます。特に子供も大好きで、需要の大きいイクラは、日本国内だけでなくロシアでも不漁が続いているのが痛いところ。
ただ、シシャモについては、資源の回復によりアイスランドで今年から漁が解禁され、ノルウェーでも来年には解禁されそうな雰囲気がありますので、見通しは明るいかもしれません。
余談ですが、上のリンク先で読むことのできるこの2か国の海洋資源の維持に関わる姿勢が羨ましすぎます。こういう取り決めや取り組みを中国とできると、サンマも復活するのかもしれませんね。
危機になりそうな要因
海流・気象の変化
猛暑・ゲリラ豪雨・大雪、極端になってきている最近の気象を見る限り、温暖化の影響が確かにありそうです。今年は雪害もありましたが、異常に早かったり遅かったりする梅雨入りや、線状降水帯による大雨と水害。予想もつかない被害が出るケースが増えています。
また、魚介類ついては、水産資源の減少もあるとは思います。しかし、最近では黒潮など、日本列島に沿うように進んでいる海流の蛇行で、近海に魚が寄らなくなっている状況があるようです。その分、遠くまで出れれば良いのですが、装備の違い・燃料代の高騰もあり、そう単純に片づけられるものではありません。
需要と供給のバランス
”世界の工場”として、作物・工業品など輸出していた中国が輸入する側にシフトしてきました。
中国国内の天候不順による凶作もあるかもしれませんが、それだけ産業構造の変化が起きているんだろうと推測されます(実際、第一次産業従事者が減り、二次・三次産業が増えてきている)。
サンマを一生懸命先に搔っ攫っていく漁もその変化の一部。
13億人を超える人口を持つ国が食料確保に動いた結果、世界全体の需要と供給のバランスも崩れてしまうのは必然。また、国が豊かになった分、日本からも食料を輸入するようになってきました。
今後どうすれば良いのか?
秋田県だけなら・・・食料自給率は174%と全国2位の水準となっています。米に集中していて、付加価値がついている作物が少ないという課題はあるものの、これは中々の数値だと思います。
と言うわけで、陸の孤島だとか交通の便が悪いだとか色々言われますが、鎖国した場合は県内で自給できるのは悪くない状況だと思います。
では予想される危機に対して、具体的にどんな対策やマインドが必要なのか・・・?3つほど考えてみました。
①自然回帰-あるものを食べる。獲れるものが変わるなら、獲れるものを食べる。
最近では秋田でもブリや鰆が多く取れるようになってきたと聞きます。また、ここ数年、北海道でもブリの水揚げが増えていますが、魚として人気や馴染みがないので、高値が付かないそうです。でも、ないものねだりも何も生まないので、今獲れるものを受け入れるのが必要かなと思います。
②農業で豊かな暮らしができるような政策。
私的には農業で生計を立てられるのが理想ですが、全く一からなので生活のことを考えると及び腰になってしまいます。個人では大きな勇気が要りますが、例えば…法人化によって組織にノウハウが蓄積されていきますし、農地統合で生産性が上がったりと、豊かになっていける道筋はありそうです。
③購買競争に勝つ-売り易い相手になる。
例えば…ここ数年のホタテ高値は、中国からの買い付けが増えた結果でした(日本人ほど規格や形についてうるさいこと言わないので、売り手も売り易いそうです)。
そうした時には、厳格に外郭の規格を定めるのではなく、中身の品質が問題なければ良しとする風潮を高めないと日本人に売ってくれるサプライヤーが減っていきそうな予感がしています。面倒くさいこという方は相手したくない心理です。
また、今では規格外のものでもしっかり商品として流通できるようになれば、その分フードロスも減っていくと予想されます。ただ、禁止された農薬・化学物質を使った危ないものはやはり弾く必要はありますが…
因みに、フードロスについてはお店の数だけ発生する側面もありますが・・・資本主義の下では出店の差し止めは難しいと思うので、完全な自由経済からの転換も必要になってくるかもしれませんね。
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