ここ数年、地域おこしの一環として特に熱心に行われている取り組みが、伊勢堂岱遺跡を含む北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群の世界文化遺産への登録です。
歴史をザックリ紐解くと…
遺跡自体が認知されたのは、昭和5年(1930年)の国鉄・阿仁合線(現在の秋田内陸線)の建設工事の際に大量の石器・土器が見つかったことから始まります。
その後、約60年後の平成4年から実地調査が始まり、次々に環状列石が見つかりました。その結果、学術的にも貴重なことが認められ、建設中の道路のルートを変更するなど、発掘と保存が進められていきました。
平成8年に北秋田市(当時は鷹巣町)に管理が移ってからは、発掘が進められるとともに、ワーキンググループも発足。平成13年には国指定史跡として官報に公示され、同年より秋に縄文まつりが開催されるようになりました。
その後も、近隣の湯車川で鮭の放流が行われたり、小中学生によるボランティアガイドの活動が始まったりと、遺跡に絡んだ活動が活発になり、世界文化遺産登録に向けての機運が益々高まってきている状況です。
伊勢堂岱遺跡・縄文館
まずはココで伊勢堂岱遺跡全体の知識を仕入れましょう。
意外にコンパクトな造りではありますが、発掘の際の出土品や発見から現在に至るまでの歴史をパネル・映像・実物を見ながら学ぶことができます。
伊勢堂岱遺跡で出土した土偶が一堂に会しています。1番から46番までそれぞれに番号が振られ、1人1票持って好きな土偶に投票することができます。
やっぱり1番のセンター、縄文館の入り口で出迎えている彼が人気No,1なのかなと思いきや、実は3番人気でした。マンガの人気投票でも、主人公や作者イチオシキャラが人気No,1にならない構図と一緒です。
上写真のドラえもんの映画【のび太の日本誕生】に出てくるツチダマに良く似た土偶が1番人気でした。
後ろに実はいる【笑う岩偶】君が第2位。初めてみましたが意外に小さい。他の上位はイケメン土偶が独占していました。
こうやって一堂に並べてみると、造られた時代か・作家なのか、非常に顔・体形と共に個性があります。こういった違いを見比べられるのも、縄文館の面白いところです。
伊勢堂岱遺跡へ!
縄文館で伊勢堂岱遺跡のあらましを学習した後、裏手から遺跡を目指します。
カウンターにて、動物除けの鈴と整理券を受け取りました。
遺跡部分は動物除けの電気柵でぐるっと囲まれていますが、如何せん柵が低いので、頑張って侵入する動物がいる可能性はあります。人間が居ると知らせる鈴は、山歩きには必需品となっています。
実際、道中はこんな道のりです。正直、クマが居てもおかしくない雰囲気はありました。ちょっとしたハイキング気分が味わえます。
ここは【縄文の森】と呼ばれるスポット。
杉の木が多い秋田県北部ですが、この周辺ばかりは広葉樹が多く茂っていました。昨年落ちたと思われるドングリが今も散らばっています。こういう実は、冬眠を控えたクマには大事なエサになります。ただ、それらが不足するようになり、人里近くで目撃が増えている原因になっています。
そこを抜けると…
環状列石にご対面です!
環状列石はA・B・C・Dの4箇所あり、しっかり形として見て取れるのはA・B・Cの3箇所です。進行方向的に私たちはDから入りましたが、正直これを見て、遺物を見出だすのは難しいなと思いました。
実際のところ、何故作られたか可能性を探っても、真実は当時の作った人々だけが知ること。様々な願い・祈りを込めて造られたんだろうなという想いを組んで眺めて来る位が丁度良いのかもしれません。
秋田県内の環状列石がある遺跡と言えば、鹿角市の大湯環状列石が有名です。一時流行ったMMRというマンガでも、黒又山(クロマンタ)と共にUFOが目撃されたとかなんとかと合わせて、当時の私にとっては興味をそそられる内容に仕上がってはいました。
それはさておき、大湯環状列石のストーンサークルはほぼ単一の岩石で、色も同じ様に揃えられているそうです。
それと比較しても、伊勢堂岱遺跡のそれは、米代川・小猿部川のどちらからも採取されたためか、実に多岐にわたる種類の岩石、色で構成されています。200年に渡って作られたために質が一定しなかったのか、それともカラフルに仕上げたかったのか、本当に適当に持ってきてたのか、真相は分かりませんがこのような違いが同じ秋田県内の遺跡間でもあります。
同じ環状列石の遺跡でも、よくよく見るとディープな違いがあることはココで初めて学ぶことができました。
まとめ
丁度今日、大阪府の百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録決定のニュースが流れました。国内的にはおめでたいことではありますが、その裏では縄文遺跡群の推薦見送りになっているハズなので、複雑な気持ちにもなりますね。
世界遺産登録のためには、まずは国内で他の候補に勝たないといけませんが、2013年から文化庁への推薦案を提出していたものの、ずっと見送りが続いていました。
ようやく2018年に推薦案が採用され、2020年審議の正式候補になりました。でも、今度は文化遺産・自然遺産問わず1国1カ所の審議という条件変更が加わり、自然遺産で登録を目指している【奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島】とかち合うことに。最終的にどのような判断が下るのかは分かりませんが、まずはココを突破していただきたいと思います。
ただ、伊勢堂岱遺跡を眺めた時には長期的な観光資源としては、地元民ながら正直疑問も残ります。
近隣であれば、圧倒的に青森県の三内丸山遺跡が規模も施設も充実しているため、そちらに集中してしまう気がしています。また、4道県にまたがるということで、旅行ツアーもなかなか組み辛いのではないかと言う危惧もあり、どこまで恩恵を得られるか。
もし世界遺産に登録され、縄文ツアーが組まれる際には当遺跡群の最南端に当たる立地を最大限アピールし、発着点・終着点として確実にコースに入れて頂けるような働きかけが必須になると思います。
営業情報・アクセス
●営業時間;
9時00分~17時00分
●休館日;
月曜日
●電話番号;
0186-84-8710
●住所;
〒018-3454 秋田県北秋田市脇神伊勢堂岱
駐車場は、バスも5台ほど停車できる広い造りになっています。
電車だと秋田内陸線・小ヶ田駅で降りて徒歩10分弱。
●入場料;
2019年7月現在・無料です。
以前は大人200円・子供100円の入場料がありました。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 今年で19回目を数える【北秋田市縄文まつり】が9月14日、伊勢堂岱遺跡・縄文館で行われました。 […]