実は一般に食べられている比内地鶏って、ほとんどがメスと言うことをご存知でしょうか?
ちなみに、比内鶏は天然記念物のため、食べることはできません。比内鶏のオスとロードアイランドレッド種のメスを掛け合わせて生まれたメス鶏が、比内地鶏として育てられます。
そして飼育方法にも、秋田県が定める比内地鶏飼養管理マニュアルに沿って、28日~150日以上を平飼い、または放し飼いをするといった厳格なルールがあります。
オスはメスに比べると、肉が繊維質で固く、臭みもあるということで殆どが廃棄処分になっています。でも、数年前からオスの活用を探る動きは出てきて、実を結んでいる活動も出ています。
その一つが、この肉博でデビューを飾った大館おんじ鶏です。
大館おんじ鶏って?
比内鶏を父に、ロードアイランドレッド種を母に持つオス鶏です。
と言うことで、基本的な素雛は比内地鶏と同じで違うのは性別だけです。産まれてすぐに選別されてきた雄鶏は、秋田比内やさんの独自の飼育方法で、お肉の旨味を最大限活かされていきます。
ちなみに、”おんじ”は秋田弁で弟のこと。比内地鶏の弟分的な存在になります。
そのこだわりは…以下の2点。
飼育期間は60日
基本的に若鶏よりも親鶏の方が旨味が強く良いダシが出ますが、肉質が固いという弊害が出できます。他の畜種においても、若い方が肉質が柔らかく臭みがない傾向があります。羊のラム・マトンがその辺は顕著だと思います。
ということで、60日間という日数は、旨味と柔らかさのバランスを保つための、最適な肥育期間なんだと思われます。生き物相手ですので、長い期間をかけての試行錯誤されたんだと想像されますね。
独自の飼料で育てられる
独自の飼料…としか説明がないので、具体的に普通と違う点はあくまでも推察になります。ネットから色々探しますと、大体以下のポイントを抑えると肉質改善につながっていくようです。
- 乳酸菌に漬け込んだ飼料を食べさせる
- 高カロリー・高たんぱくの飼料
1については、秋田北鷹高校で用いられている手法で、オスを去勢するとともにこの飼料を与えることで、肉質改善・品質改善につなげているようです。実際、料理の際にヨーグルトに漬け込むとお肉が柔らかくなる効果があるので、そういった理屈だと思われます。
ちなみに、同高校では秋田北鷹ケイポンとしてブランド化への取り組みを進めています。こちらも食べてみたい。
2については、農研機構で平成14年に発表された研究結果によるもので、このタイプの飼料を食べさせることで、もも肉については品質改善・肥育期間の短縮という一定の結果が出ているようです。
実際に食べてみよう!
おんじ鶏の半身揚げ
1コ1,800円でした。
まぁ、正直イイお値段してしまいます。このコストが比内地鶏たる所以でもありますが、雄雌選別しているので、雛の時点で歩留まりが悪い。ただ、雄の活用が進んでいけば、全体コストが下がり、もっと身近なものになるのではないかと期待しています。
テントの中では、フライヤーで常に揚げている状態ですが、2度揚げでじっくり火を通さないといけないため、中々在庫が溜まらない状態でした。お客さんは場合によっては待ち時間が発生しますが、常に出来立てが手に入るので、悪いことではないです。しかも、この2度揚げの手順を踏まないと、中までしっかり火が通らないので、食中毒防止のためには絶対必要な手法です。
食べ方は自由!
そのまま被りついてもよし、写真のように小分けにしても良いです。勿論、骨はありますが関節の部分に刃を入れたり、あばら部分は柔らかくなっているため、キッチンハサミでも十分解体は可能です。
食べてみると…下味も最小限、シンプルに鶏の旨味が伝わってきます。食感は固さ…というか比内地鶏独特の弾力はやはり感じますが、旨味は決して劣っているとは思いませんでした。
個人的には、もも肉よりむね肉の方が比内地鶏は美味しいと思っていますが、そういった部分も共通して言えましたね。
竿灯串
1コ500円。
秋田の夏の風物詩である、竿灯まつりをイメージした焼き鳥串です。キンカン、皮つきのモモ肉、内臓(モツ)を交互に刺したという、おんじ鶏を丸ごと味わえる焼き鳥です。
これをタレにつけながら焼きますが、これを繰り返すこと3回。焼きあがるころにはしっかりタレが染みっているんだろうなぁ、と期待して食べてみましたが…
モツと皮の部分は良かったですが、キンカン部分が少し味足りないかな?という感想でした。つけ焼きよりも、しっかり時間をかけて漬け込んだ上で焼き上げた方が良かったかもしれません…。
ただ、臭みは全くなく、内臓系が平気な方は勿論、食わず嫌いで来ている方にも食べて戴きたい焼き鳥でした。
まとめ
- 肉×博でデビューしたおんじ鶏
- 比内地鶏のオス雛の活用への第一歩
- 雛の歩留まり向上で全体の飼育コスト抑制
- もっと気軽に比内地鶏が食べられるようになるかも
秋田比内やさんのお店でも、おんじ鶏が食べられるようになるのかどうかまでは未確認でした。竿灯串が焼きあがるまで、雨宿りさせていただいた時に聞いておけば良かったと後悔しています。
私が今後期待している効果は、先述した通り、オス・メスの選別は続くとしても雛全体の絶対数が増えることによるコスト抑制。結果的に、お客さんに今よりお手頃な値段で届くようになることです。
値段が安くなることで、比内地鶏ブランドが失墜するという心配も当然あります。でも、それ以上に消費拡大によってファンが増えたり、もっと身近に知ってもらうという動きの方が、今後の比内地鶏ブランド存続につながるのではないでしょうか…と。
生産者も減っている状況の中、生産数が減ると更に手が届かない存在になります。となると、最早却ってブランドも衰退するだけだと思います。それを防ぐために、とりあえず若い方に食べてもらって、ファンになっていただいて、その中から後継者が出てくれば…と考えます。
やっぱり比内地鶏って、普通の鶏と美味しさが全然違いますもん
ずっと守っていきたいですよね。
比内地鶏をもっと知ろう
最後にお役立ちできるサイトを紹介。
比内やさんのお店も今度訪ねてみます。
●比内地鶏ネット
●秋田比内や 公式サイト
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