一昨年から続く令和の米騒動ですが、今期は民間在庫過去最高、豊作の見込みで価格が下落するのではないかと言う見込みの報道がされています。
一方で、コメ価格が下がると収穫を止めるかも…という農家の声も報じられ、主食であるコメの生産体制は依然として課題がたくさんだと感じます。
ただ、一般的に報じられるのは「うるち米」であり、「もち米」のニュースはほとんど目にする機会がないように感じます。
実は主食米価格の値段高騰の裏で、もち米も相当な影響があり、この秋以降は更に製品価格に影響が出そうなので、現時点で分かっている情報・見込みをまとめてみました。
JA概算金の推移(うるち米ともち米)
秋田県産の2020年から1年ごとのうるち米・もち米の概算金の概要をグラフにまとめてみました。
※2020~2024年については、米穀安定供給確保支援機構の資料で、秋田県の水稲もち米が8,000円→8,000円→8,000円→8,000円→11,500円、あきたこまちが10,600円→10,600円→11,100円→12,100円→16,800円と整理されています。(出典:公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構(もち米事業部))
※2025年産は、従来の「全農県本部等からJAへの提示額」という同一資料ではなく、JA秋田なまはげの公表した農家概算金・1等・60kg・紙袋を参考値として使用。うるち米はあきたこまち1等が当初28,500円、その後の追加払いを含め30,000円となっています。もち米一般1等は28,000円です(出典:秋田なまはげ農業協同組合)

令和の米騒動が起こったのは、2024年夏ごろ。
きっかけは、2023年夏の記録的な猛暑による米の品質低下・収穫減と、コロナ禍明けのインバウンド(訪日外国人)増加や外食需要の回復による急激な需給バランスの悪化によるものでした。
その為、集荷競争が過熱し、普段主食として食べられている「うるち米」の概算金が60㎏当り16,800円(前年比約+4,000円)と急激に高騰、翌年は更に拍車がかかって60㎏当り30,000円と3年間で約2.5倍にもなりました。
ただ、今年については、民間在庫量が過去最高の上、豊作の見通しが出ているので、価格は幾らか下がるのではないかと言う見通しになっています。
ただ、あまり大きく報道された記憶がないのですが、「もち米」も25年産の概算金は60㎏当り28,000円に達しており、こちらは3年間で約3.4倍と更に急激に価格が高騰しました。
しかし、この数字を単純に「もち米も米価高騰で急上昇した」と見ると少し違うようです。
「うるち米が先に上昇し、もち米は数年間取り残された。その後、2024~2025年になって急激に追いついてきた」構図が見方としては正確なようです。
もち米の生産状況

全国のもち米生産は、水稲生産量の約4%の毎年約30万トンで推移してきました。
ただし、2025年の生産量は未公表でしたが、検査された量(15.3万トン)が減ったこと、と毎年の検査率が約65%で安定している点から逆算して約24万トンと今回は推計しました(あくまでも直近の傾向から安易に私が算出した数値です)。
実際に検査量が減った理由は以下に示すように幾つか考えられます。
- もち米→うるち米への作付転換
- 生産者・集荷業者が検査に出す量の減少
- 産地での在庫・販売タイミングの変化
- もち米需要低迷による「作っても売れない」問題
特に可能性が高そうな項目が①。2025年はうるち米の需給が大きく変化したため、主食用米の作付面積は、備蓄米などからの転換もあり、136.7万haと前年より10.8万ha増加したそうです。
ただし、農産物検査は任意なので、生産されたもち米 = 検査されたもち米ではありません。したがって、「検査量が11.5%減った=全国のもち米生産量が11.5%減った」ではありません。
むしろ2025年については、生産量の減少 + 検査を経由しない流通の増加という両方を疑う必要があります。
需要減少?
また、検査量が減った理由として、2025年12月の業界情報では、もち米について「生産量が減っているが、それ以上に消費が落ち込んでいる」との見方が出ています。(※株式会社日本農産情報 https://nousan-j.com/index.html「もち米の居所つかめず」2025年12月19日 (金) 11時30分より)
実は、私の感覚としても合致した部分があります。

ここからは特に具体的なデータがある訳ではなく、主観や記憶が中心になります。
主食の「うるち米」の高騰もですが、その他の食材、今年はナフサショックにより包材も、と食品に関わるあらゆる物の値段が上がり続けています。
私が今パッと思いつく原因は以下の通り。
- 円安(輸入品が高騰)
- 燃料高
- 人件費のアップ
- 品不足
と基本的にはコストプッシュ型で、ここ数年、特に大きな要因が”品不足”と考えています。
異常気象、海産物の不漁は年々酷くなりますし、戦争によって生産工場はワーカー不足、鳥インフルエンザ、円安によって海外勢に食品を買い負ける…と様々な原因があります。
その中で、食べ物の中でも”必需品”に位置づけられる主食米や主菜、野菜類は比較的売り上げは保つものの、”嗜好品”に位置づけられる商品群は不振の傾向が見られます。
そういった中で、お惣菜のおはぎなど甘味類は嗜好品として我慢する方に位置付けられてしまった上に、値上げが重なり、厳しい傾向になったのではという仮説を持っています。
そのため、需要減少 → 買い手が積極的に買わない → 流通が鈍る → 検査に出すタイミングも遅れる → 検査数量が減る
という検査量減少の構図も考えられるということです。
今後の値動きは?

2026年8月時点で見ると、もち米とうるち米は、今後かなり違う値動きになる可能性が高いです。
うるち米は「高値から正常化」へ
2025年産のうるち米は、価格高騰を受けて生産量が大きく増えました。その結果、2026年4月末の民間在庫は249万玄米トンと、前年同月より81万t多く、過去10年でも非常に高い水準になっています。
さらに2026年産も、前年並みの高い作付規模が維持される見通しです。
2025年
高騰・不足感
↓
生産増
↓
在庫増
2026年
在庫増+新米入荷
↓
需給緩和
↓
価格下落
一部では2026年産新米が5kg 3,000円を割る可能性も指摘されていますが、生産コスト(肥料・燃料・農機・人件費など)が上がっている、備蓄米の買戻しの可能性もあるので、暴落までは行かないのではないかと言う見通しです。
「もち米」の価格は?
こちらはうるち米と違い、26年度産についてもにあくまでも推測です。
基本的には高値傾向は続くと思いますが、うるち米以上に弱含みの価格推移になる可能性もあり、現時点ではどっちにも転びそうです。
うるち米以上に価格が下がる可能性としては「うるち米よりも需要が弱い」部分にあります。うるち米のように「毎日食べる主食」という需要ではありません。
つまり、うるち米=必需性が高いのに対して、もち米=嗜好性・加工需要の比重が高いという違いがあります。
通常の商品なら「価格下落 → 生産者が減産 → 供給減少 → 価格回復」となります。
ところが、もち米の場合は「価格下落 → 生産者がうるち米へ転換 → もち米生産減少 → しかし需要も減少 → それでも在庫が残る → さらに価格が弱くなる」という負の循環に入る可能性があります。
ただし、もち米には「下がりにくい要素」もあります。もち米は生産量自体が小さく、北海道・新潟・秋田・佐賀など特定産地への依存度が高い商品です。

そのため、猛暑・低温・台風などで主要産地の作柄が悪化すると、一気に需給が締まって価格が反発する可能性があります。
つまり、もち米は
- 平年作 → 価格弱含み
- 不作 → 急反発
という、うるち米よりも需給変動の影響を受けやすい市場になる可能性があります。
最後に
「うるち米」価格のニュースに比べて中々報じられていない「もち米」についてまとめてみました。
嗜好品の性格がより強いもち米を使った商品なだけに、価格が落ち着いてくれれば一安心・・・と言うことでもないのが、非常に難しい局面だと思いました。
また、価格が下がる=農家さんの収入低下にもなりますし、それによって作付けが減ってしまうと原料の確保が更に困難になるという負のスパイラルに陥ります。
消費者としてはより安く買いたいというのが本音ですが、昨年からもち製品に使われている材料にも少しずつ変化が起きています。
上新粉や白玉粉など、団子や餅の材料が海外のお米を使っている物にシフトしてきていました。比較的値段上昇が抑えられている製品は、特にその傾向があったと感じています。
ただ、秋田県も全国の中でも高いシェアをもつもち米の生産地ですし、その地域地域で美味しいお餅製品があるので、今年度は何とか正常化の方向へ向かってほしいと思います。


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