現在の日本では、飲食料品は原則8%の軽減税率ですが、政府は2026年8月時点で、これを1%に引き下げる案を2027年4月から2年間実施する方向を決めています。
法案・制度の詳細は今後の国会審議等で確定する部分がありますが、実際施行されるとどのような変化があるか、考察を含めてまとめてみました。
まず消費者への影響

現在、酒類・外食を除く飲食料品には8%の軽減税率が適用されています。これが1%になると、たしかに消費者の負担は軽くなります。
例えば、税抜398円 → 税込430円の商品があるとします。
税抜価格398円は変わらず・消費税が8%→1%へ変更と仮定すると、430円→402円。1個当たり28円・約6.5%の値下げ効果(単純に7%減にならないことにも注意)です。
年間50万円を食品に使っている家庭なら、単純計算で約3.2万円/年の負担軽減になります。
ただ、単純にこのような計算が成り立つかと言えばそうでもない可能性があります。
価格が一律で下がるとは限らない?
一例として、先日、スーパーで購入したお弁当のラベルを例に挙げます。

外食のメニュー表は、税込価格だけを表記している場合がほとんどかと思います。
しかし、スーパーのPOPや商品に貼りつけられているラベルをよく見ると、価格が2つ併記されているケースが多いと思います。
往々にして、上の大きな方が本体価格(税抜価格)で、下に税込価格が少し小さめに表記されており、実際に支払う金額は小さい方の税込価格です。
多くの企業がこの方式を採用している理由は、税込価格だけを大きく表記すると、支払う金額は同じでも購入者が心理的に価格が高く感じてしまい、他社との競争に負けてしまう傾向があったからです。
そのため、減税前に税抜価格・税込価格を併記している企業は、見かけ上の価格は変わったように感じにくいので、お客様は買い物した後に初めて「思ったより安く済んだ…」と言う感想になるのかもしれません。
ただ、回数を重ねるごとに「もう少し買える」と言う実感が出てくると思うので、減税から少し時間が経った時に売り上げの向上につながる可能性があります。
一方、減税前に税込価格だけを表記をしている企業は、価格を全て書き換えるので、お客様が価格が下がったことの実感をすぐ持ち易く、より減税効果が早く出る可能性があります。
その一方で、価格を変えなければ純粋に利益の向上になるので、便乗値上げするのでは…?と言う心配もされています。
しかし、運営コスト(人件費・光熱費・資材費・・・)も上がっているため、特定の企業の利益が上がったとしても、今後の更なる従業員の賃金上昇の原資にもなります。
その為、一概に価格が下がらないからと言っても減税効果がないとは言えないことにも注意が必要です。
外食産業は向かい風に?

現在はざっくりと
- 食品(酒類除く)・持ち帰り → 8%
- 外食 → 10%
という仕組みです。
食品だけ1%になれば、自炊・持ち帰り食品と外食の価格差がさらに大きくなります。
例えば、「スーパーで買って家で食べる」という選択が、相対的に有利になります。
一方で、外食産業から見ると「食品だけ1%なのに、外食は10%」という状態になるため、外食産業には逆風になる可能性があります。
外食産業もコロナ禍でテイクアウトを広げてきましたが、元々容器代も込みで考えているスーパー業界と違い、容器代が余計に掛かるので利益的には店内飲食よりも厳しくなります。
しかも2026年のナフサ不足で、包装容器も2~3割一斉値上げ済みの状況なので、コロナ禍よりももっと厳しい環境になっていそうです。
ただ、消費税減税で、食費が少し浮くことで外食へ行く回数増へつながる可能性も否定はできません。
値上げはまだまだ続く。その中で減税効果は?
ただし、これはあくまで「税抜398円が398円のままだった場合」です。
26年9月以降も多数の食品値上げが予定されており、前述の商品も仮に税抜価格が398円→420円になったとします。
消費税1%なら、420円+4円=424円です。減税前の430円と比較すれば6円安いですが、「398円→420円」という22円の値上げは消えていません。
つまり、減税は「価格上昇の原因」を取り除くものではないのです。
今、食品価格を押し上げている要因

- 円安
- 日本は小麦、大豆、飼料、油脂原料、肥料、燃料などを大量に輸入しています。円安になると「輸入価格↑→ 原材料価格↑→ 食品製造コスト↑→ 小売価格↑」となります。
- 原材料・農産物そのものの価格上昇
- エネルギー・物流費
- 人件費ー最低賃金の上昇や人手不足によって人件費(単価)は上がり続けています
- 品不足
- 税金を下げても商品そのものが不足していれば、価格形成は下がりにくい。むしろ減税によって購買力が増えれば、「需要↑ → 品薄↑ → 税抜価格↑」となる可能性すらあります。
そして非常に重要なのが「食料自給率」

2025年のカロリーベースの食糧自給率は37%へ低下(米の需要低下が要因)。2024年は同38%なので、更に後退した形になります。
また、例えば国産の豚肉でも、豚=国産だから完全に円安と無関係、とはなりません。豚を育てるための、飼料・燃料などに輸入品が含まれているからです。実際、農水省の統計では2024年度の飼料自給率は26%です(参照:https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/02.html?utm_source=chatgpt.com)。
つまり、「国産食品を買えば、円安の影響を受けない」わけではないということです。
日本は、食品自体も食糧生産に関わる肥料・燃料・飼料なども大きな割合で輸入に頼っています。
その中で、円安が進むと食品価格へも当然影響が及ぶので、減税したからと言って今以上に食品が安く買えるとは限らないというケースも私は想定しています。
個人的には、所得税減税など手取りが増えた実感がある方が、物価上昇が止まらない局面では良い気がしていますが、現役世代以外の物価高対策にはなりにくそうです。
食品に絞って減税される理由は、生命の維持に一番直結するものが食料と言う面もあると思うので、より全体へ効果が波及しやすい消費税減税の方が、生存権から考えると現状ベターなのかなとも思います。
まとめと考察

- 食品消費税8%→1%化で負担は6.5%軽減される
- ただし、一律に価格が下がるかと言うとそうならない可能性もある
- 小売/テイクアウトと外食産業で税率差が広がるので、外食には向かい風に?
- 減税以上のコストアップの可能性も今の状況では高いかもしれない
と言うことで、まとめてみると食品価格が決まる要因が色々複雑で、現在はコストプッシュ型の値上げが続いている局面なため、期待通りの負担軽減には繋がらない可能性があります。
それでも、確実に食費は減ると思いますし、その間に次に予定されている「給付付き税額控除制度」がより良い制度になっていることを祈りながら、減税が実施されるのを待ちたいと思います。


コメント